第7回フレスコ展の関連イベントとして、会期中にフレスコ画のワークショップを行いました。
フレスコ展実行委員でベテランのフレスコ画家、クリバヤシツネオ先生と一緒に、私も講師を務めました。参加者は小学生から大人まで。制作時間は4時間程度です。
今回のワークショップでは、漆喰下地に水で溶いた顔料で絵を描く、フレスコ画の古典的かつ基本的な技法(ブオンフレスコ)での制作を行いました。消石灰と砂だけで作った漆喰モルタルを、植木鉢に金ゴテで塗り付け、漆喰が生乾きのうちに、水で溶いた顔料で彩色をします。
なぜ植木鉢なのかというと、素焼きの植木鉢の素材はレンガと同様に、たっぷりの水を吸収し保水してくれる意味で、レンガ壁と同じ支持体としての役割を果たしてくれるからです。漆喰を塗らない部分にマスキングテープを貼り、たっぷりの水を染み込ませておきます↓
下地制作に使う材料や道具は、砂、消石灰、金ゴテ…左官道具と同様です。
消石灰:珪砂を2:3の割合でカップにすくい、各自のビニール袋に入れて、袋の上から揉んで混ぜ合わせてもらいました。
骨材としての砂は、粒子の異なる珪砂を混ぜ合わせることで、強固な漆喰モルタルとなります。
ビニール袋から出した消石灰+砂を、土手を作るようにして、真ん中に水を加えながら練り合わせていきます。
漆喰モルタルは、耳たぶ位の柔らかさになったら完成です。
これを金ゴテ植木鉢に塗り付けていきます。
しかし、糊剤などを一切混入しない天然素材だけを使った漆喰モルタルを、曲面の下地に塗り付けていくというのは、かなり難しい作業です。小学生の参加者も、苦戦しながらも頑張っていました。
漆喰モルタルが途中で固くなり、塗りにくくなってきた場合は、霧吹きで水分を加えて再度練り直していきます。
1㎝程度の厚みで、漆喰を全体に塗り付けたら、最後は柔らかめの金ゴテを使って表面を平らにならします。 しっかりと漆喰を圧着させることで、堅牢な下地になります。
ワークショップでは午前中2時間を使って、植木鉢の漆喰下地を完成させました。
漆喰を塗った直後はまだ表面が柔らかく、筆で描くと下地が削れてしまうため、表面を少し乾燥硬化させてから描画を開始します。昼食の間に乾燥させることにします。
30分~1時間後、表面が乾燥し内部のみが湿った状態の漆喰下地は、急速に水を欲しがり、水で溶いた顔料をどんどん吸収していくようになります。
この状態が、フレスコ画のゴールデンタイムで、一気に描画を進めていきます。
漆喰乾燥後は、吸い込みが悪くなり、粉上の顔料が表面に残り、指でこすると取れてしまいます。
そうなると、フレスコ画の描画時間は終了です。
漆喰の乾燥過程で起こる、石灰の炭酸化現象を利用して描くのがフレスコ画です。
下地が乾ききる前に描き終わらなければならない描画時間の制約が、フレスコ画が難しいと言われる所以です。
その日の湿度や漆喰の厚みにもよりますが、今回のケースだと5時間程度は描画が可能です。
ですがアトリエの使用時間が3時までの関係で、着彩時間は2時間程度でした。
それでも皆さん筆運びがよく、順調に制作を進められていました。
世の中の全ての絵具は、顔料+接着剤(展色材)で出来ています。
接着剤が油なら油絵具、アラビアガムなら水彩絵具、アクリル樹脂ならアクリル絵具です。
しかしその接着成分を加えることで、顔料そのものの発色は損なわれてしまいます。
フレスコ画は、絵画技法の中で唯一、その接着剤を必要とせず、水で溶いた顔料単体で描くことが出来ます。
それは、下地側に顔料の接着作用があるからです。
消石灰が元の石灰岩に戻っていく炭酸化現象の中で、顔料粒子が石灰の結晶(カルサイト)の中に封じ込められて定着します。
生の顔料発色は、本当に目の覚めるような美しい色です。
天然の顔料、本来の色の美しさを実感しながら、着彩をしていただきました。
持参の墨を使用される方もいました。
岩絵具等の粒径の大きな顔料は石灰の結晶の中に取り込まれませんが、粒子の細かい墨でも描くことができます。
世界最古の絵画技法、フレスコ画で描いた植木鉢が完成です!
消石灰の化学反応によって、顔料粒子は石灰の結晶の中に封じ込められるように定着し、色付きの大理石をまとった植木鉢が完成します。
イタリアの教会の壁に描かれたフレスコ画と同様に、雨や紫外線に負けない色材保存の仕組みで色付けした植木鉢のフレスコ画は、実際に植物を植えて、屋外に置いて使っていただけます。
材料準備や制作環境確保の難しさ、指導者不足の関係で、フレスコ画を学べる機会はなかなか無いと思います。
今回、フレスコ画技法を広めていきたいというクリバヤシ先生の想いで、横浜市民ギャラリーのアトリエをお借りしてワークショップを開催する事が出来ました。
私も、貴重な経験をさせていただきました。